英雄たちの探求 . Морган Райс
Читать онлайн книгу.ソアは、追いつこうとしながら考えた。
「話を聞こうとはしないのだな。それがそなたという者なのだ。頑固で。母親と同じだ。羊を助けようと追い続けるのであろう。」
ソアは、自分の考えをアルゴンに読まれて赤くなった。
「そなたは元気の良い若者じゃ。」アルゴンは更に言う。「意志が強く、誇り高い。良い性質だが、いつかそれで足をすくわれる。」
アルゴンは苔の生えた尾根を登り始めた。ソアは後を追う。
「国王のリージョンに入りたいのであろう。」アルゴンが言った。
「そうです!」ソアは興奮して答えた。「私にもチャンスはあるでしょうか?あなたが実現させることはできますか?」
アルゴンは笑った。深い、うつろな声にソアの背筋が寒くなる。
「わしは何でも起こせるし、何も起こせないとも言える。そなたの運命は既に決まっているのじゃ。選ぶのはそなた次第だが。」
ソアには理解できなかった。
尾根のてっぺんに着くと、アルゴンはソアのほうに顔を向けた。ほんの数フィートしか離れていなかったので、アルゴンのエネルギーがソアを焼き尽くすようだった。
「そなたの運命は重要なのだ。」アルゴンは言った。「運命を捨ててはいけない。」
ソアは目を大きく開いた。運命?重要?誇らしい気持ちがこみ上げてくるのを感じた。
「なぞかけのような話し方をなさるので、私にはよくわかりません。もう少し説明してください。」
突然、アルゴンが消えた。
ソアには信じられなかった。四方を見回し、耳をそばだて、考えた。全部想像だったのだろうか?妄想だろうか?
ソアは振り向いて木を調べた。この尾根の高みからはより遠くまで見ることができた。遠くに動くものが見えた。音を聞き、自分の羊だと確信した。
苔だらけの尾根を転げ下り、音のする方へ森を戻って行った。進みながら、アラゴンとの出会いがソアの頭から離れることはなかった。現実に起きたこととは思えなかった。ここで国王のドルイドが何をしていたのか、なぜここなのか? 彼は自分を待っていた。なぜだ?自分の運命とは何のことを言っていたのか?
なぞを解こうとすればするほど、わからなくなった。アラゴンは、進んではいけないと警告しながら、同時にそうするよう誘惑した。ソアは進みながら、何か重大なことが起こるような虫の知らせを感じていた。
曲がり角を回ったとき、眼前の光景を見て足が止まった。一瞬にして、悪夢が現実のものとなった。毛が逆立ち、この暗黒の森に足を踏み入れるという重大な過ちを犯したことを悟った。
ソアと向かい合い、30歩と離れていない場所にサイボルドがいた。四足で立ち、のそりのそりと動く馬ほどの大きさの筋肉質の体は、暗黒の森、いや恐らく王国中で最も恐れられている動物のそれだった。ソアは実物を見たことはなかったが、話に聞いたことはあった。ライオンに似ているが、ずっと大きく、体は深い緋色、目は黄色く光っていると。赤い色は、あどけない子どもたちの血の色からきていると言うのが伝説だった。ソアは今までに何回かこの動物を見たという話を聞いたが、どれも疑わしいとも聞いていた。それはこの動物に出会って生きて帰った者がいなかったからであろう。サイボルドを森の神であり、何かの前兆だと考える者もいる。何の前兆なのか、ソアには全く考えが及ばない。